獅子吼
戻る
( 獅子吼全景 ) ![]() (photo : Matubara) |
獅子吼フライトエリアは北陸自動車道金沢西ICから車で30分程南に走った鶴来町獅子吼高原にあり、手取川の扇状地(加賀平野)の扇のかなめに位置する。テイクオフは獅子吼高原のゴンドラ山頂駅(標高600m)のすぐとなりに設けられており、テイクオフを中心に全長約10kmの南北に延びる山脈(高度差300〜600m)の西斜面をフライトする。“日本海に向かって広がる扇状地の扇のかなめ”という地理条件により加賀平野を流れる海風が獅子吼付近に収束し山脈一帯に安定したリッジ風をもたらす。これに山麓の鶴来町市街地を熱源とするサーマルが加わり初心者でも長時間のソアリングを楽しむことが出来る。これらの恵まれた条件により古くからハング、パラを問わず優秀なソアリングパイロットを育ててきたエリアである。山頂へのアクセスはハングとパラで異なってくる。パラフライヤーはザックを担いで4人乗りゴンドラで山頂へ、ハングフライヤーは車に機体を積んで林道を上がり、車の回収にゴンドラを利用する事となる。冬季の積雪などで林道が使用できない場合、ハンググライダーを 西斜面・海風リッジ+サーマルから察する通り、このエリアは午後にコンディションのピークを迎える。時間に余裕があるのなら9:30の高原開園と同時に山頂へ上がってレストハウスでのんびりお茶を飲みながら午後のフライトの計画を立てるのも良し。又、午前中に一仕事を済ませて山頂へ上がるのも良いだろう。但し12:00にはセットアップを完了させフライトスーツに身を包み準備をすませておこう。おっ、サーマルブローが吹き始めた。カラビナをロックして、さあテイクオフへ。 |
( テイクオフ ) ![]() (photo : Matubara) |
テイクオフエリアは走り始めは水平、走るにつれて徐々に勾配が急峻になりストレス無く自然にテイクオフ出来る様に設計された人工斜面であり、ハング4機同時テイクオフできる幅を持つ。日曜ともなるとハング・パラ4〜5機がテイクオフで横一線となりタイミングをまつ。テイクオフするときはお互い声を掛け合う事が重要だ。 コンディションがピークをむかえリッジ成分が増加するとテイクオフ上空が混雑してくる。テイクオフ前のサーマルポイントでささっと上げて南北の次のポイントへすばやく移動するのがコツだ。テイクオフにしっかりしたブローが入ったら「出まーす!!」と声を掛ける。「どうぞ!!」のお許しをもらったらテイクオフ。 テイクオフするとまず目に付くのが麓のランディング場まで続く高度差450mの急峻な斜面だ。まず、この斜面を攻略しよう。 斜面には山頂の南北両端から2つの尾根が張り出し4合目あたりで一つとなってランディングへ続いている。つまりY字型の尾根となっているのだ。地元フライヤーの間では古来よりこのY字の尾根を“コマネチの谷”と称している。攻略のポイントは風向が北よりの時はコマネチの南尾根を、南よりの時はコマネチの北尾根を這い上がってくるサーマルをつかんで高度を稼ぐわけである。上手くサーマルをつかみトップアウトしたら高原から発生するサーマルを狙い旋回ポイント奥へ奥へとシフトさせると上昇率がぐっと上がるはずだ。100m程ゲインしたら獅子吼サーキットコースへ乗り出そう。 |
( 奥獅子吼 ) ![]() (photo : Matubara) |
獅子吼サーキットコースは、1981年から続くハンググライダー全国大会のデサントバードマンカップでも例年使用されるコースで、北はDDI鉄塔、南は手取川第3ダムを往復する一周16kmの周回コースである。 まずはサーキット南コースの手取川第3ダムを目指そう。南コースは山脈の標高が徐々に高くなっているのでサーマルで高度を稼ぎながら尾根線上を走って行く。まずはテイクオフで100m程ゲインしたら機首を南に向け地蔵小屋を通過して尾根の入り口、前獅子吼(標高730m)に入る。前獅子吼は山脈の表面と裏面からのサーマルが合流する良いサーマルポイントとなっている。若干荒れ気味のサーマルではあるが山頂+200m程になったら次のポイント奥獅子吼(標高930m)へ向かおう。奥獅子吼にたどり着く為には手前の高圧線を越えなければならない。途中のサーマルを大切に乗り継ぎ鉄塔と十分な高度の余裕を持って通過する必要がある。高圧を越え奥獅子吼の西向きのボールに入り込むとマイルドかつ強力なサーマルに乗り、春のコンディションになれば海抜1600mの雲低へと導いてくれる。 |
(第3ダム) ![]() (photo : Matubara) |
奥獅子吼をトップアウト出来れば最近の競技機を使用すれば南コースの残り、手取川第3ダムをリターンしてテイクオフ前までは直線グライドで難なく周回できる。テイクオフ前に戻り、再びコマネチの谷を利用してテイクオフ+100m程に復帰したら次はサーキット北コースのDDI鉄塔だ。 |
( 倉が岳 ) ![]() (photo : Matubara) |
北コースは山脈の標高が徐々に低くなっている。テイクオフから次のサーマルポイント北高圧鉄塔まで走るとそこから先は尾根線の見えない台地となる。南コースの山岳地帯に比べサーマルのサーチは難しくなるがそこが面白い。私のお奨めはDDI鉄塔の根元から立ち上る弱いサーマルで遊んだ後、北コース最高峰倉が岳へ入り込むコースである。倉が岳山頂には大きな池があり水面に写る機影を眺めたりするのも楽しい。倉が岳も良いサーマルポイントでありしばしば雲低に導いてくれる。ここで雲低1600mにたどり着いたら次のクロスカントリーコースへ乗り出そう。 クロスカントリーは獅子吼から東へ直線で55km程の富山猿倉スキー場までがお奨め。クロカンのベストシーズンは4月の雪解けから田植えが始まる4月後半までの短い時期ではあるが雪に覆われた山々を眺めながらのフライトはすばらしい。富山へは獅子吼山系、医王山山系、八乙女山系の3つの山脈をわたって行く。これらは共に南北に延びた10km程の山脈で山脈間距離が15km程ある。山脈間には10km近いブルーホールが横たわっているので注意が必要だ。コツは各山脈のリフト帯を利用して風上に切りあがり山脈北端で高度を獲得した後、フォロー風に乗ってブルーホールを抜けて次の山脈の南端を目指すN字のルートをとる。獅子吼サーキットコース北端、倉が岳付近の標高1600m地点がクロスカントリーコースの入り口だ。 |
( 刀利ダム上空から見る医王山・砺波平野 ) ![]() (photo : Kaneko) |
医王山山系南端を目指すと湯涌温泉上空で海抜600m程にたどり着く。そこから医王山南斜面に回り込んでサーマルキャッチし、眼下に刀利ダムを見ながら高度を獲得する。サーマルキャッチできなかった場合は湯涌温泉で入浴して帰ることになるのでタオルを携帯しておいたほうが良い。サーマルキャッチし標高1000m程まで持ちなおすと医王山山頂が見えてくる。ここから北方向に切りあがり医王山山頂(標高940m)に入り込む。東面のIOXアローザスキー場からの強烈なサーマルに乗り海抜1600mに戻ればクロスカントリーコースの難所はクリアだ。N字ルートを取り次は八乙女山系南端のつくばねフライトエリアを目指そう。 八乙女山系の南端にはつくばねフライトエリア、北端には八乙女フライトエリアがある。富山との県境の医王山からは砺波HG&PGエリア安全委員会が管理するフライトエリアとなるのでエリアルールを守ってフライトしよう。 |
( 八乙女 ) ![]() (photo : Kaneko) |
つくばねフライトエリアで雲低に復帰して景色を眺めると、東方向に雪に包まれた荘厳な立山山系の景色が見えてくる。さらに距離を伸ばすにはつくばね東側に広がる深い山間部を避ける必要がある。八乙女山系上空のクラウドストリートを使いフルスピードで10km風上の山脈北端の八乙女フライトエリアに切りあがろう。ここまで来ると東側に富山平野が開けてくるので東進が可能となる。富山平野、富山空港の管制空域を避ける為、平野と山間部の切れ目を走りながら牛岳で再び雲低に付ける。ここまで来たらゴールの猿倉スキー場へファイナルグライドだ。 |
( メインランディング ) ![]() (photo : Matubara) |
獅子吼でのランディングは立横100m程のハング・パラ共用のランディング場を使用する。ランディング場の北と東面には林が迫っていて高度処理が困難である。西側に開けた田んぼ上空で高度処理しサイドアプローチでランディングを決めよう。 ランディングした後は、すぐそばのスクール事務所で下山チェックを済ませ、暖かいコーヒーを飲みながらフライト談義に花を咲かせる。 |
S.Kaneko